
不動産業界において、顧客対応の品質は企業の信頼と直結します。
一方で、顧客接点の多様化が進む現代において、電話だけでなくメールやチャット、SNSなど、複数のチャネルを統合的に管理するコンタクトセンターの重要性は高まっています。
これは、不動産業界においても変わりません。
そこでこの記事では、不動産業界におけるコンタクトセンターの役割や従来の「コールセンター」との違い、中小企業が抱えがちな顧客対応の課題、そしてそれらを解決するための具体的な方法について、ご紹介いたします。
目次
1. コンタクトセンターとは?
コンタクトセンターとは、顧客からの問い合わせや要望に対し、電話だけでなくメールやチャット、SNS、Webサイトの問い合わせフォームなど、多様なチャネルを通じて対応する窓口を指します。
従来のコールセンターが主に電話応対に特化していたのに対し、コンタクトセンターは顧客とのあらゆる接点を統合的に管理し、顧客体験(CX)の向上を目指す点が特徴です。
2. コンタクトセンターとコールセンターの違いは?
繰り返しになりますが、コンタクトセンターとコールセンターの最も大きな違いは、対応するチャネルの範囲にあります。 コールセンターが電話応対を主としているのに対し、コンタクトセンターは電話に加えてメールやチャット、SNSなど、複数のデジタルチャネルを統合的に活用します。
また、目的も異なります。 コールセンターが顧客からの問い合わせ対応や、企業からの発信といった「通話」業務が中心であったのに対し、コンタクトセンターでは顧客との関係性構築や、顧客満足度の向上を追求し、最終的には企業の売上や利益への貢献を目指します。
顧客の多様なニーズに応えるため、より戦略的な役割を担うのがコンタクトセンターだといえるでしょう。
3. 不動産におけるコンタクトセンターの業務内容は?
不動産業界におけるコンタクトセンターの業務は多岐にわたります。 主な業務内容として、インバウンド業務、アウトバウンド業務、そしてこれらに付随する管理業務に分けられます。
3-1. インバウンド業務(顧客からの問い合わせ対応)
インバウンド業務とは、顧客からの電話やメール、チャットによる問い合わせに対応する業務です。
不動産業界では、以下のような問い合わせが想定されます。
- 物件に関する問い合わせ…物件情報、価格、内覧希望、空室状況など
- 契約に関する問い合わせ…契約内容の確認、更新手続き、解約手続きなど
- トラブル・クレーム対応…設備故障、近隣トラブル、賃料に関する問題など
- 資料請求…物件資料、パンフレット、Webサイトに掲載されていない詳細情報など
- 来店予約・内覧予約…営業担当者との面談、物件の内覧日時調整
これらの問い合わせに迅速かつ的確に対応することで、顧客の疑問や不安を解消し、信頼関係を構築することが可能です。
3-2. アウトバウンド業務(企業から顧客への情報発信)
アウトバウンド業務とは、企業から顧客に対して電話やメール、SMSなどで情報発信する業務です。
不動産業界では、以下のような業務が考えられます。
- 物件情報の案内…新着物件、値下げ物件、キャンペーン情報などの提供
- 契約更新の案内…賃貸契約や管理契約の更新時期の通知
- 未契約顧客へのフォローアップ…資料請求後の状況確認、内覧後の意向確認など
- 入居者への連絡…物件のメンテナンス、修繕工事の案内、重要事項の連絡など
- アンケート調査…顧客満足度調査、ニーズ調査など
アウトバウンド業務は、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客との関係維持や満足度向上にもつながる重要な役割を担います。
3-3. 上記に付随する管理業務
コンタクトセンターの運営には、上記インバウンド・アウトバウンド業務に付随するさまざまな管理業務も含まれます。
たとえば、以下のような業務です。
- 顧客情報管理…問い合わせ履歴、契約状況、顧客のニーズなどの情報を一元的に管理し、次の対応に活かします。
- FAQ(よくある質問)の作成・更新…頻繁に寄せられる質問とその回答を整備し、顧客自身で解決できる機会を増やします。これにより、オペレーターの負担軽減にもつながります。
- 応対品質の管理…オペレーターの応対履歴の確認、モニタリング、フィードバックを通じて、応対品質の均一化と向上を図ります。
- データ分析…問い合わせ内容やチャネルごとの傾向を分析し、サービス改善やマーケティング戦略立案に活用します。
これらの管理業務を適切に行うことで、コンタクトセンター全体の効率化とパフォーマンス向上が期待できます。
4. 不動産におけるコンタクトセンターの役割は?
コンタクトセンターは、単なる問い合わせ窓口に留まらず、企業の成長に大きく貢献する重要な役割を担っています。
4-1. 顧客満足度への貢献
コンタクトセンターは、顧客が最初に接する企業の顔となることが多く、顧客満足度に直結します。 顧客の疑問や不安に対し、迅速かつ的確な対応を行うことで、顧客は安心感や信頼感を抱き、企業への満足度が高まります。
特に不動産の取引は、顧客にとって大きな意思決定を伴うため、丁寧で親身な対応が不可欠です。 複数のチャネルに対応することで、顧客は自身の都合の良い方法で気軽に問い合わせができ、顧客体験の向上につながります。
4-2. 企業への売上・利益への貢献
顧客満足度の向上は、リピートや紹介につながり、結果として売上や利益への貢献が期待できます。
また、コンタクトセンターで得られた顧客の声(VOC)は、サービス改善や新商品開発の貴重なヒントとなります。 顧客のニーズを深く理解し、それに合った提案を行うことで、成約率の向上にもつながるでしょう。
さらに、資料請求や内覧予約といった見込み顧客の獲得に直接つながる業務も担い、営業活動を強力にサポートします。
4-3. 企業ブランドイメージの向上
質の高い顧客対応は、企業のブランドイメージを向上させます。
顧客は良い対応を受けた企業に対し、好意的な印象を抱き、その企業のファンとなる可能性もあります。 反対に、対応が悪ければ悪評が広まり、ブランドイメージを損ねる恐れもあります。
コンタクトセンターは、企業の顔として、常に一貫した高品質な対応を提供することで、信頼性の高いブランドイメージを構築する役割を担っているといえます。
5. 不動産でコンタクトセンターを設置するメリットとは
不動産業界においてコンタクトセンターを設置することには、多くのメリットがあります。
5-1.顧客対応の品質向上
コンタクトセンターでは、応対マニュアルの整備やオペレーターの教育を通じて、応対品質の均一化を図ることができます。
また、通話録音機能やモニタリングによって品質管理を徹底し、顧客対応のレベルを継続的に高めることが可能です。
さらに、複数のチャネルに対応することで、顧客は自身の状況や好みに合わせて問い合わせ方法を選択でき、利便性が向上します。これも対応品質の向上の一つの方法といえます。
5-2. 顧客情報の集中管理と有効活用
システム(CRMなど)を導入することで、顧客情報や問い合わせ履歴を一元的に管理できるようになります。 これにより、担当者が異なっても過去の経緯を踏まえたスムーズな対応が可能となり、顧客は何度も同じ説明をする手間が省けます。
また、蓄積された顧客データは、マーケティング戦略やサービス改善のための貴重な情報源として活用できます。
5-3. 業務効率化とコスト削減
電話、メール、チャットなど、複数のチャネルからの問い合わせを統合的に管理することで、業務の重複をなくし、効率化を図ることができます。
さらに、自動応答システム(IVRやチャットボット)を導入し、簡単な問い合わせは自動で対応することで、オペレーターは、より複雑な問い合わせに集中できるようになり、人件費の削減につながる可能性があります。
5-4. 新規顧客獲得および既存顧客の維持
多様なチャネルで顧客からの問い合わせを受け付けることで、より多くの見込み顧客や顧客との接点を持つことができるようになります。
特に、若年層は電話よりもチャットやSNSでの問い合わせを好む傾向があるため、これらのチャネルに対応することは新規顧客の獲得につながりやすいといえます。
また、迅速かつ丁寧な対応によって顧客満足度を高めることができ、既存顧客のロイヤルティ向上にもつながります。
6. 不動産におけるコンタクトセンターの課題
一方、不動産業界でコンタクトセンターを運用する上で、いくつかの課題に直面する恐れもあります。 ここでは、主な課題とその解決策について解説します。
6-1. コンタクトセンターの課題
コンタクトセンターの課題としては、次の4点が挙げられます。
6-1-1. オペレーターの定着率の低さ
顧客からの多様な問い合わせに対応するためには、高い専門知識とコミュニケーション能力が求められます。 しかし、精神的な負担が大きく、離職率が高い傾向にあります。
6-1-2. 業務の効率化が難しい
問い合わせ内容が多岐にわたり、定型的な対応だけでは済まないケースも多いため、業務の効率化が困難な場合があります。
6-1-3. 人によって顧客満足度に差が生まれる
オペレーターのスキルや経験によって、顧客対応の品質にばらつきが生じることがあります。
6-1-4. 多岐にわたる顧客チャネルへの対応
電話だけでなく、メール、チャット、SNSなど、顧客が利用するチャネルが増えるほど、それぞれの管理や連携が複雑になります。
6-2. オペレーターの定着率向上と人材育成が難しい
顧客からの多様な問い合わせに対応するためには、高い専門知識とコミュニケーション能力が求められます。 しかし、オペレーター業務は精神的な負担が大きく、離職率が高い傾向にあります。
6-3. 業務の効率化が難しい
コンタクトセンター業務では問い合わせ内容が多岐にわたり、定型的な対応だけでは済まないケースも多いため、業務の効率化が困難な場合があります。
6-4. 人によって顧客満足度に差が生まれる
オペレーターのスキルや経験によって、顧客対応の品質にばらつきが生じることがあり、その結果、顧客満足度にも差が生まれる可能性があります。
7. コンタクトセンターの課題を解決するために
コンタクトセンターの課題を解決し、その機能を最大限に活用するためには、いくつかの具体的な対策があります。
7-1. 外部のコンタクトセンターへ委託する
外部のコンタクトセンターへ委託すれば、外部委託先が代替要員の確保から育成までを一貫して行うため、自社で常に採用活動を行う必要がないため、オペレーターの離職リスクを低減できます。
また、コンタクトセンター業務をアウトソースしてしまうことそのものが、業務効率化となります。
さらには、外部委託先の多くは、顧客対応の「品質」を追求するための専門的な取り組み(マニュアルの整備や研修プログラムの実施、品質管理体制の徹底など)を行っているため、人によって顧客満足度に差が生まれるといった問題も生じにくくなります。
7-2. マニュアルを整備する
コンタクトセンター業務をアウトソースするのではなく、自社で行う場合、顧客対応の品質を均一化し、オペレーターの負担を軽減するために、詳細かつわかりやすいマニュアルの整備が不可欠です。
FAQ(よくある質問)の作成はもちろん、応対フロー、エスカレーション(上位者への引き継ぎ)基準、クレーム対応の手順などを具体的に記述しましょう。
さらに、マニュアルは一度作成して終わりではなく、顧客からの新たな問い合わせやサービス内容の変更に応じて、定期的に見直し、更新していく必要がある点も忘れてはいけません。
こうすることで、コンタクトセンター業務が標準化され、オペレーターによる対応に差が生まれにくくなり、業務効率化にもつながります。
7-3. 最新技術(AI、チャットボット)を導入する
最新のテクノロジーを活用することで、コンタクトセンターの効率化と顧客体験の向上を両立できます。
AIは、音声認識技術を活用して通話内容をテキスト化したり、過去のデータから最適な回答を提案したりと、オペレーターの業務をサポートしてくれます。 また、顧客の感情を分析し、適切な対応を促すことも可能です。
一方、チャットボットは、WebサイトやSNSに導入することで、簡単な問い合わせであれば24時間365日自動で対応してくれます。
これらの技術を導入することで、オペレーターは、より専門的な対応や、人によるきめ細やかなサポートが必要な顧客に集中できるようになります。
ただし、AIやチャットボットを導入することで、コストがかかったり、FAQや過去の問い合わせデータを学習させるための準備に手間がかかったりする点はデメリットなので、導入目的を明確にした上で、段階的な導入を検討することをおすすめします。
人間のオペレーターとの連携を最適化するハイブリッド型コンタクトセンターを目指すのも良いでしょう。
8. まとめ
不動産業界において、顧客との接点は多岐にわたり、その対応品質が企業の信頼と売上を大きく左右します。 従来の電話中心のコールセンターから、複数のチャネルを統合的に管理するコンタクトセンターへの移行は、顧客満足度の向上、業務効率化、そして企業のブランドイメージ向上に不可欠な経営戦略となりつつあります。
コンタクトセンターの導入には、初期投資や運用、人材育成といった課題も伴いますが、外部委託やマニュアル整備、AI・チャットボットといった最新技術の活用により、これらの課題は解決可能です。
特に中小の不動産企業様においては、限られたリソースの中で最大限の顧客サービスを提供するためにも、コンタクトセンターの導入、あるいは外部委託の検討は、これからのビジネスを成長させる上で重要な選択肢となるでしょう。
適切なコンタクトセンターの運用を通じて、顧客との強固な関係を築き、企業の持続的な成長を実現してください。
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