
不動産業界では顧客からの問い合わせが多く、スピーディーかつ丁寧な対応が顧客満足度を大きく左右します。
このため、特にコールセンターの重要性が高いといえます。
しかし、いざコールセンターを導入しようとしても、「費用はどれくらいかかるの?」「内訳は?」「どこに頼めばいいの?」といった疑問が沸いてくるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、コールセンターにかかる費用の相場や内訳を、内製(自社運営)と外注(外部委託)の両面から解説いたします。
目次
1. コンタクトセンターとは?
コンタクトセンターとは、電話に加えてメール、チャット、WebサイトのFAQ、SNSなど、多様なチャネルを通じて顧客とのコミュニケーションを行う拠点のことです。
なお、似たものに「コールセンター」がありますが、コールセンターは、主に「電話」での顧客対応を行う拠点です。 両者は顧客からの問い合わせに対応するという点で共通していますが、厳密には扱うチャネルが異なります。
近年では、顧客が自身の都合の良い方法で問い合わせをしたいというニーズが高まっているため、コンタクトセンターの概念が主流になりつつあります。
不動産業界においても、Webサイトからのチャット問い合わせやメールでの資料請求など、電話以外の接点が増えているため、コンタクトセンターとしての機能を持つことが重要です。
2. コンタクトセンターの運用形態
コンタクトセンターの運用形態には、大きく分けて「インハウス(自社運用)」と「アウトソーシング(外部委託)」の2種類があります。
2-1. インハウス(自社運用)
インハウス(自社運用)とは、自社でコンタクトセンターを立ち上げ、社員や自社で採用したオペレーターが直接、対応する形態です。
2-1-1. インハウス(自社運用)のメリット
インハウス(自社運用)の主なメリットは、次の3点です。
■ノウハウの蓄積と品質管理がしやすい
顧客の声や対応履歴が全て自社内に蓄積されるため、商品・サービスの改善やマーケティング戦略に活かしやすいです。
また、自社の社員が対応するため、顧客対応の品質を細かくコントロールできます。
■柔軟に対応できる
自社の従業員であるため、急な業務変更や特殊な問い合わせに対しても、柔軟に対応させることができます。
■顧客と密な関係構築ができる
顧客と直接、対話できることで、より深い信頼関係を築きやすいです。
2-1-2. インハウス(自社運用)のデメリット
一方、インハウス(自社運用)にもデメリットがあります。 主に次の3点です。
■初期投資とランニングコストがかかる
システム導入、オフィス環境整備、人材採用・育成など、立ち上げに多大な初期費用がかかります。 また、人件費が固定費として毎月、発生します。
■人材確保・育成の難しさ
適切なスキルを持つオペレーターの採用や継続的な育成には時間とコストがかかります。 このため、離職率が高いと、常に採用・教育のサイクルを回さなければならなくなります。
■繁閑期の対応が難しい
問い合わせ件数に波がある場合、人員の最適化が難しく、コスト効率が悪くなることがあります。
2-2. アウトソーシング(外部委託)
アウトソーシングとは、コンタクトセンター業務を専門の外部業者に委託する形態です。
2-2-1. アウトソーシング(外部委託)のメリット
アウトソーシング(外部委託)には、主に次の5つのメリットがあります。
■初期投資を抑制できる
自社でシステムや設備を導入する必要がないため、初期費用を大幅に抑えられます。
■コストを変動費化できる
問い合わせ件数や業務量に応じた料金体系を選択できるため、コストを変動費として管理しやすくなります。 また、繁忙期のみ増員するなどすれば、無駄なコストを抑えられます。
■専門性とノウハウの活用
コールセンター運営の専門知識と豊富な経験を持つ業者に委託することで、高品質な顧客対応が期待できます。
■人材管理の手間を削減できる
オペレーターの採用、教育、勤怠管理といった手間を自社で行う必要がなくなります。
■スピーディーな立ち上げが可能
専門業者に依頼すれば、短期間でコンタクトセンターを立ち上げることが可能です。
2-2-2. アウトソーシング(外部委託)のデメリット
一方、アウトソーシング(外部委託)にもデメリットがあります。
■社内にノウハウが蓄積されない
顧客対応のデータやノウハウが蓄積されるのが委託先のため、自社での活用がしにくい場合があります。
■情報共有に手間がかかる
顧客満足度向上のためには委託業者との密な連携が必要ですが、情報共有や連携に手間がかかります。
■品質コントロールが難しい
自社で対応品質を直接、管理できないため、維持・向上のためには、外部業者との定期的なミーティングやフィードバックの実施が必要になります。
3. コンタクトセンターの費用相場と内訳
コンタクトセンターの費用は、運用形態や規模によって大きく変動します。 ここでは、それぞれの費用相場について解説します。
3-1. 運用形態別の費用相場
まずは、運用形態別に費用相場を見ていきましょう。
3-1-1. インハウスの場合
自社でコンタクトセンターを運営する場合、総額で400~700万円ほどかかるといわれています。 費用は初期費用とランニングコストに分けられます。
- システム・機材導入費…30~300万円程度かかります。小規模であれば数十万円、大規模なコールセンターであれば200~300万円かかることもあります。この費用には、CTI(電話とPCの連携システム)、CRM(顧客管理システム)、PBX(電話交換機)、電話機、PC、ヘッドセットなどが含まれます。
- 回線工事費…電話回線やインターネット回線の工事費です。電話1台あたり1~2万円程度がかかります。
- オフィス環境整備費…オフィスの賃貸料、内装工事費、机、椅子などの備品代。一般的なオフィス費用と同様で、15坪程度の広さで350万円程度がかかります。
- 人材採用費・教育費…求人媒体利用料や広告宣伝費(月20~40万円程度)、オペレーターの研修費用。
■インハウスのランニングコスト(月額・年額)
一方、インハウスのランニンングコストには、次のような費用がかかり、人件費が最も大きな割合を占めます。
- オペレーターの給与…時給1,000~3,000円程度が相場です。社会保険料や福利厚生費も考慮すると、オペレーター1人あたり月額20~30万円程度かかります。
- スーパーバイザー(SV)などの管理職の給与…月額30~50万円程度。
- システム運用・保守費…システムの利用料やライセンス費用です。月額8~15万円、または年間50~150万円程度がかかります。
- 通信費・光熱費…オフィスの光熱費、通話料金、インターネット接続費用などです。月額3~70万円程度がかかります。
- 設備の保守費用…施設や機材のメンテナンス費用です。年間約50万円程度がかかります。
このほか、教育・研修費用などもかかってきます。
3-1-2. アウトソーシングの場合
専門業者に委託する場合、初期費用は抑えられるため、ランニングコストが中心となります。
アウトソーシングでかかる初期費用は主に業務設計費・研修費などです。業務フローや教育マニュアル作成費用、オペレーターの研修費用などが含まれます。
金額の相場としては、1~5万円程度が一般的ですが、業務内容によっては20~50万円かかる場合もあります。
■アウトソーシングのランニングコスト(月額)
アウトソースする場合、ランニンングコストの料金は、「月額固定型」と「従量課金型(成果報酬型)」「その他」に分かれます。
【月額固定型】
毎月、一定の基本料金を支払う方式です。対応件数や時間に関わらず固定費用として発生します。
金額は、オペレーターの配置人数、稼働時間、サービスレベル(SL)の保証などによって決まります。
費用相場は、月額10~30万円程度。たとえば、専属のオペレーターを確保してもらう場合は高くなります。
規定件数以上の対応(コールオーバー)が発生した場合は、追加料金がかかることがあります(1件あたり100~250円程度)。
【従量課金型(成果報酬型)】
コール件数や対応時間に応じて費用が変動する方式です。 費用相場は、1コールあたり300~1,000円程度。 電話がなければ料金は発生しませんが、月額固定型よりも1件あたりの単価が高い傾向にあります。
コール単価のほか、1分単価、成果報酬(特定の目標達成ごとに発生する)が設定されているケースもあります。
【その他】
上記以外に発生する可能性がある費用です。
- 初期設定費用…サービス開始前のシステム連携、業務フロー設計、マニュアル作成などにかかる費用。
- オプション費用…特定のレポート作成、多言語対応、緊急時対応、夜間・休日対応、アウトバウンド業務(架電業務)など、基本サービスに含まれない特別なサービスに対する追加料金など。
3-2. 規模別(席数・オペレーター数)の費用目安
一方、費用相場を規模別(席数・オペレーター数)に見た場合は、次の表のようになります。
オペレーター数(席数) | 月額費用目安(インハウス) | 月額費用目安(アウトソーシング) |
---|---|---|
1~3席 | 30~80万円以上 | 10~30万円程度 |
5~10席 | 100~200万円以上 | 30~70万円程度 |
10席以上 | 200万円~ | 70万円~ |
4. コンタクトセンターは外部に委託する方がお得!
特に中小企業の不動産会社様の場合、コンタクトセンターを外部に委託する方が、初期投資を抑え、人件費を変動費化できるため、結果的にコストメリットが大きいケースがほとんどです。
インハウスでコールセンターを構築・運用する場合、ここまで見てきたように、システムの導入から人材の確保・育成、日々の運用管理まで、多岐にわたる専門知識と手間、そして多額の費用が必要になります。 特に、不動産会社様にとってのコア業務は、物件の売買仲介や賃貸管理であり、コンタクトセンター運営は必ずしも本業ではないため、そこまでの手間や費用をかけるのは得策ではありません。
外部委託であれば、専門業者が持つノウハウやインフラを活用できるため、高品質な顧客対応を比較的安価かつスピーディーに実現できます。 また、繁閑期に合わせて柔軟に人員を調整できるため、無駄なコストを削減し、貴社のバックオフィス業務の効率化にもつながります。
5. まとめ
コンタクトセンターをインハウス(自社運用)で運用する場合、ノウハウ蓄積や品質管理がしやすい反面、初期費用やランニングコスト、人材確保の手間が大きいのが特徴です。
一方、アウトソーシング(外部委託)は初期費用を抑えられ、コストを変動費化できるメリットがある反面、ノウハウ蓄積のしづらさや情報共有の手間があります。 費用は運用形態や規模(席数・オペレーター数)、業務内容によって大きく変動します。
中小企業の不動産会社様においては、専門性やコスト効率の観点から、外部委託が有利な選択肢となることが多いです。
貴社にとって最適なコンタクトセンターの形を見つけるためには、まずは現状の課題を洗い出し、どのようなサービスレベルを求めるのか、そしてそれにかけられる予算を明確にすることが第一歩となります。
複数の選択肢を比較検討し、賢い投資を行いましょう。
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